実録!食を切り口とした集客事例

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観光客を引き寄せて、まちが元気に! 「屋台村」という形、ただいま増殖中

2012/08/13

 屋台って、いいですね。ふらりと立ち寄れて、威勢のいい大将や女将が名物料理とともに迎えてくれる。福岡の場合、観光客をも引き寄せて、立派な観光資源として存在感を示しています。屋台ならではの開放感や客同士のふれあいなど、食以外の魅力も交錯して、独特の雰囲気を醸しているからでしょう。

 そんな屋台が、最近、地方都市で増殖しています。20軒程度の小さな店舗が集まる「屋台村」という新しいカタチで。運営母体はまちおこしグループやNPO法人など。まちの活性化と若手起業家の育成を兼ねた賑わいの場をつくることで、景気低迷に悩む地方都市の起爆剤にしようという考えのようです。
 なかでも、話題となっているのが九州新幹線の終着駅・鹿児島市の「かごっまふるさと屋台村」です。4月26日にオープンするや、連日の大盛況。開村1カ月を前に来村者が10万人を超えたという盛況ぶりなのです。
 なぜそんなに人気なのか? 福岡から鹿児島に突撃。その様子を覗いてきました。

 鹿児島中央駅がある駅前通りに面して立つ、祭りのステージを思わせるメインゲート。それをくぐって中に入ると、狭い通路の両脇に扉などを設けないカウンターをメインとした小さな店がずらり。路上にもイスやテーブルが置かれています。その多くの店は、1店舗あたりの広さが3.5坪程度。店によっては立ち飲みスタイルなどもありますが、8人ほどが入ればいっぱいになり、カウンター越しに店主と対面するスタイルとなっています。
 どういうメニューの店があるかといえば、定番のラーメンやおでんはもとより、鹿児島県内の郷土料理、すし、そば・うどん、スペイン風居酒屋バルまであり、お値段はおでんが1個100円から、焼酎は1杯200円からなど、屋台ならではの安さ。お客さんは女性グループや若者、観光客と思われる年配のご夫婦など、実にさまざまです。
 それにしても賑わい振りは想像以上。通りにはおいしいにおいとお客さんの笑顔があふれ、鹿児島弁の呼び込みの声が雰囲気を盛り上げていました。
 村内には鹿児島の観光パンフレットなどを置いた情報コーナーがあり、観光客を意識した造りに。ロケーションも鹿児島中央駅から徒歩5~6分でアクセスできる位置にあり、観光客のほか、日帰り出張族もふらりと立ち寄れます。

 ここを運営するNPO法人鹿児島グルメ都市企画に話を聞いてみました。すると、鹿児島の食と焼酎文化の発展と地域の活性化、鹿児島市の玄関口のおもてなしの場をつくるとともに、若手起業家を育成するという目的もあるとの答え。
 なので、出店者には鹿児島市や近隣の市町村の既存店のほか、屋台村をステップに本格的に飲食店経営を目指す若い人も多く、開業までに焼酎の知識や鹿児島弁などの研修を受けることが条件となっているそうです。
 どうりで、鹿児島の町中ではあまり聞かれなかった鹿児島弁がここでは飛び交っていて、「鹿児島に来た~」という気分にたっぷり浸れます。また、お祭り的な雰囲気に誘われて地元客も多く訪れるようになったとかで、観光客といっしょに鹿児島の夜を満喫しているそう。これは福岡の屋台を思わせますが、単に店を集めるだけではなく、こういった演出や教育、地元客の取り込みに成功したのが「かごっまふるさと屋台村」の人気の秘密のようです。

 地方に行くと、昼は人が歩いていないのに夜になるとどこからこんなにと思うほどたくさんの人が出てきて、飲食店はけっこう賑わっているという光景を見ることがあります。一方、観光や出張で初めて訪れた町だと、どこで食事やお酒を楽しんでいいか迷うことがありますよね。
 こういう屋台村という形態だったら、そんな初めての人でも安心して気軽に入れるし、地元の人も珍しさや話題性から一度は行ってみたくなるもの。でもその先、観光客や地元客をさらに取り込んでいくのはお店や運営団体の腕次第。おしいことはもちろん、値段的にリーズナブルである、雰囲気をうまく演出してお客をあきさせない、接客レベルを保つなどに気を配る必要があります。
 それらがかみ合えば、成功は間違いなし。その例が「かごっまふるさと屋台村」といえるでしょう。
 今後の課題は少しでも長く継続させていくこと。それに尽きますが、さてどんな答えが出るか、しばらくは見守っていきたいと思います。

 かごっまふるさと屋台村の入口。
かごっまふるさと屋台村の入口。
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 村内はご覧のような賑わいぶり。
村内はご覧のような賑わいぶり。
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執筆担当:九州の取材.com(メニィデイズ)

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