組織能力向上・人材育成戦略

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組織改革(制度)事例 ②

2012/09/24

今回は、前回記事の改革(制度構築)相談事例の紹介の続きです。
前回記事のクライアントの制度再構築の相談で、現段階で大きな改革の必要性がないと判断した私ですが、その理由は、経営者や役員待遇ではないですが、組織内で経営者の右腕的存在の管理職と会議を重ね、社内の人的資源の側面からの組織分析を実施し、さらに一般従業員達に対する社員研修と面談を実施した結果、経営者以下最年少の若手社員までお互いの性格やくせ(価値観)などを理解しつつ、安定した生活と少なくても社会人として小さいながらも人材育成の機会を得れる現環境に満足し、更なる物心両面の幸せの追及に共通した考えを持ち、互いが努力するという組織風土があることがわかったのです。

一般社員との面談で、人事考課の話題になり自己に対する評価について感想を聞いたところ、ある社員は自分なりに頑張った割には、経営者や上司の評価が以外に低かったことに対して、評価する側の問題ではなく、自分が期待に応えきれていない事への懸念をあげ、「社長がそう判断したんだから、自分の頑張りが足らなかったのでしょう。次は会社に褒めてもらえるようにがんばります。」という声を耳にしました。
そしてその社員については、ある打ち合わせで社長が彼の将来にたいして、人事考課とは逆に高い評価を下しており、社外の研修への参加も計画していました。

今では、すでに廃れつつある家族のような日本的経営と日本的人材育成の基本形がそこにはあったのです。
経営者や上司は部下の将来まで考え、部下は上司の判断に全幅の信頼を寄せて、互いが信頼関係にあるわけです。
つまり、綿密な仕組みや制度ではなく、人間的なつながり信頼関係によって立つ組織だったのです。

そこに細かい制度を導入して四角四面に管理するより、お互いの信頼関係とチームワークで組織運営をしたほうが、よりこの会社らしいと判断したわけです。

もちろん仕事を進めるうえで、属人的なノウハウの蓄積より、組織にノウハウが蓄積される方がベストであると私は常々感じておりますので、考課制度には応用しませんが、業務フローの明確化をめざし、仕事の流れを整備しマニュアルまでいかなくても共有できるような体制を提案しました。
これで、少なくても仕事を知っているか、仕事が出来るかの共通した最低ラインの判断基準ができ、人材育成と対外信用のツールは確保できる事になります。

このように時として、その企業の規模や組織状態で通常のスタイルとは違う手法をとったり、過去の運営スタイルやノウハウを復活させたり、トレンドとは逆の判断っをすることもけっして少なくないのです。
このように、組織内の信頼関係で情実的主観判断による組織運営を私は、「社長勝手制度」と呼んでいます。
悪く言えば、好き嫌いによる組織運用なわけですが、嫌いな者同士の集団ではないので別に不具合はないのです。
外資に長くいたからこそ、嫌いな者同士を制度管理するより、同じような価値観や容認できる、寛容できる仲間が集う集団を作り上げるほうがはるかに高い事業成果をたたき出せる事を知ったのです。


執筆担当:有限会社HRエージェント

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